はじめに
ガソリンの暫定税率とは、日本における揮発油税や地方揮発油税の一部として設定されている税率のことです。近年、税負担の軽減を求める声が高まる中で、この暫定税率を廃止すべきかどうかが議論されています。
2025年2月28日配信されたニュースでは、立憲民主党が国民民主党などと共同でガソリンの暫定税率を廃止する法案を来週国会に提出する方向で調整していることが明らかにしました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6d610c57012d649fa564c3892d4f291d5427cecb
本記事では、多くの業界に影響を及ぼすガソリン暫定税率の廃止が実現した場合、ガソリン価格、経済、環境などにどのような影響が及ぶのかを詳しく解説します。
1. ガソリン暫定税率とは?
1-1. 暫定税率の概要
ガソリン暫定税率は1974年に導入され、道路整備のための財源として活用されてきました。
1960年代から日本は高度経済成長期に入り、自動車の普及が急速に進みましたが、道路の整備が追いつかず、交通渋滞や事故の増加が社会問題となっていました。
そのため、道路の建設や維持管理のための安定的な財源確保が求められていました。
また、1973年には第一次オイルショックが発生して原油価格が急騰したことで、日本経済はインフレに陥り、財政健全化が迫られました。
これらを背景として暫定税率が導入され、その増収分は「道路特定財源」として、高速道路や一般道路の建設・維持管理のために使われることになったのです。
現在の税率は以下の通りです。
- 揮発油税:28.7円/リットル(本則)+25.1円/リットル(暫定分)=合計53.8円/リットル
- 地方揮発油税:5.2円/リットル(本則)+5.2円/リットル(暫定分)=合計10.4円/リットル
1-2. 暫定税率廃止の議論の背景
主な議論のポイントは以下の通りです。
- 消費者負担の軽減:ガソリン価格の高騰が続く中、税負担の軽減を求める声が強まっている。
- 財源の確保:暫定税率を廃止した場合、道路整備などの公共事業に必要な財源をどのように確保するのかが課題。
- 環境問題:ガソリン税の引き下げが、化石燃料の使用拡大を招く可能性がある。
消費者負担の軽減を背景として、2024年12月11日、自民・公明・国民民主の3党が、ガソリン税に上乗せされている暫定税率の廃止に合意しています。
消費者負担の軽減、が議論されている背景は以下の通りです。
- ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けた原油価格の高騰
- アメリカや欧州各国がロシアへの経済的な締め付け強化をする中で、世界第三位の原油産出量を誇るロシアからの原油の供給が滞る(輸入禁止)ことで価格が不安定化
- 石油産出国の自主減産
- 再生可能エネルギーへの転換や、世界的な景気減速を受けて原油価格が下落したことを受けて、原油供給量をコントロールするOPEC(石油輸出国機構)が価格を下支えするために供給を減少させました
もともと、“暫定”税率という名の通りガソリン暫定税率は一時的な措置のはずでした。
しかし、2025年2月現在でも延長され続けているのが実情で、見直すべきだという批判も強まっています。
2. ガソリン暫定税率廃止の影響とは?
2-1. ガソリン価格への影響
暫定税率が廃止されると、ガソリン1リットルあたり約30円~40円程度安くなる可能性があります。例えば、現在のガソリン価格が170円/リットルの場合、暫定税率廃止後は130円~140円/リットルに下がる計算になります。
ただし、以下のような要因によって、実際の価格変動は異なる可能性があります。
- 原油価格の変動:世界的な原油価格の高騰・下落の影響を受ける。
- 円安・円高:為替レートの影響により、輸入コストが変動する。
- 石油元売りの価格調整:企業の価格戦略によって、消費者価格が変動する可能性がある。
2-2. 経済・消費者への影響
(1) 家計の負担軽減
ガソリン価格が下がることで、家庭の交通費が削減されます。特に、車通勤をしている人や、地方に住んでいる人にとっては大きなメリットとなります。
(2) 物流・運送業界への影響
ガソリン価格の低下は、運送業界にとっても朗報です。配送コストが削減されることで、商品の価格が抑えられ、消費者の負担も軽減される可能性があります。
もちろん、配送コストの低下が価格にそのまま転換されれば消費者の恩恵は増えますが、一方で企業の利益率は変わらずにビジネスとしての恩恵には繋がりません。暫定税率廃止をきっかけに消費が増加することを期待するか、価格を変えずに企業の利益率を上げるかは今後の動向に注視すべき事項です。
2-3. 政府財政・税収への影響
暫定税率の廃止によって、年間約2兆円以上の税収が失われると試算されています。この減収をどのように補填するのかが課題となります。
考えられる代替財源の例:
- 他の税制改正(例えば消費税率の引き上げ)
- ガソリン税の一本化(税率を見直し、合理化する)
- 環境税の導入(CO2排出量に応じた課税)
2-4. 環境への影響
ガソリン価格の低下は、消費量の増加を招く可能性があります。これにより、温室効果ガスの排出が増加し、地球温暖化対策に逆行する可能性が指摘されています。
一方で、以下のような対策も考えられます。
- 電気自動車(EV)の普及促進
- 再生可能エネルギーの活用拡大
- エネルギー効率の良い車の開発支援
3. 企業・個人が取るべき対応策
3-1. 消費者の対策
- 燃費の良い車を選ぶ:ハイブリッド車やEVの導入を検討。
- 公共交通機関の活用:ガソリン価格に左右されない移動手段を選ぶ。
- カーシェア・ライドシェアの活用:自家用車の維持費を削減する。
3-2. 企業の対策
- 物流コストの最適化:配送ルートの見直しや燃費の良い車両の導入。
- 再生可能エネルギーの活用:EVトラックの導入など。
- 政府の補助金・助成金を活用:EVや燃料効率の高い車両の導入を支援する制度を活用。
4. まとめ:今後の展望と注意点
ガソリン暫定税率の廃止は、消費者や企業にとってメリットもありますが、財源の確保や環境への影響など、多くの課題も抱えています。政府の政策動向に注目しつつ、個人や企業は今後のエネルギーコストの変化に備える必要があります。
今後の注目ポイント
- 政府の税制改革の方向性
- 再生可能エネルギーの普及状況
- ガソリン価格の国際的な動向
ガソリン暫定税率廃止が私たちの生活や社会にどのような影響を及ぼすのか、今後も情報を注視していきましょう。
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